海に焦がれる碧い書斎

感想、考えたことの記録

読書してたはずが「バールのようなもの」で殴られ、解剖され、宇宙が広がった感覚に襲われた

とんでもない本に出会ってしまったなぁ

 

 

 

地球星人

地球星人

 

 

コンビニ人間読了後「見方が面白いし共感できるところあるし面白い!親近感わくところもあるから他の本も読んでみようっと♪」

 

殺人出産読了後「オ゛ェ゛エ゛……でもサクサク読めちゃう面白ォ゛ェ゛

 

で、地球星人を読んだ後はタイトルの通りです。殺人出産ですらなかなかハードに思えたのにこのお話は殺人出産含めたあの本の他の短編を全て含みかつさらに香辛料と味噌を加えて炒めたかのような凄まじい物語になってました。

試される理性!

疑われる常識!

開けてしまった感情!

全てが殴られる!

それなのにページをめくる手が止まらない……

 

 

さてこの本の面白さと恐ろしさがどこにあるか、ちょいちょい本編に関わる言葉(ネタバレ)含めて解剖していきましょう。

 

 

 

 

 

読書かと思ったらパンドラの箱開けてた

 

さて、この本の面白さと恐ろしさは「読む人の脳みそをほじくり返すかもしれない」作用があることです。

主人公の奈月を軸に、過去として描かれる幼少期と成人した現代が交互に描かれます。過去の様々な体験(まろやかな表現)と大事な幼なじみ由宇と交わした約束やちぎり(まろやかな表現)を心の奥底にしまい大人として生きるのですが、

まぁ過去も現代もそれぞれしんどくてしょうがなかった。

具体的に書くのもいろんな意味で憚られるので割愛しますが、端的に言うと生きづらさが圧縮された感じで、物理的にも精神的にもグロくて、人によっては読んでて動揺したり共感したりしてオ゛ェ゛る可能性もあります。

私は正直、話を進めるたびに「もうやめてくれ」と頭を抱えながらもなぜかどっぷり浸ってきました。奈月の目線がファンシーなものになったと思ったら突然俯瞰というか第三者目線になったり、その境界線が曖昧になったりその描写に引き込まれてしまうのです。奈月が「生きのびる」ためにとった行動に目が離せないのです。

 

 

 

 

読書かと思ったらパワーワードに殴られてた

 

この本には「工場」とか「部品」という言葉がしょっちゅう出ます。それは奈月が今生きる世界が「とても機械的で、非合理的で、訳がわからん」と思う感覚を絶妙に示したものです。コンビニ人間あたりでもそのワードセンスが溢れてますので、あの感じで畳み掛けます。

奈月の家族が奈月に対して話しかける内容も在り方もかなり暴力的なところがありまして……

一見するとありがちなように見える会話ですら皮肉まみれ&淡々に述べてるあたりが、とってもクレイジーな表現だなって。(褒めてます)

タイトルにもある「地球星人」も後半から頻繁に出るようになります。読み終えた後「やべぇ地球星人って野蛮じゃね!?」と興奮しつつもやっぱりオ゛ェ゛りました。(褒めてます)なんでそんな感覚に追われるのかはまぁとにかく読んで確かめてほしいですね。

 

読書かと思ったらなんかすっごいジェットコースターに乗ってた

 

序盤から結構しんどいシーンが織り交ぜられてるんですが、これは可愛い方でした。いろんな衝突があり主人公の奈月が夫の智臣と共に秋級(あきしな)へ行き、由宇と久し振りに会うことからなんか凄い勢いで「地球星人」と「宇宙人」の物語が加速していくんですね。いやー由宇と出会うことで幼い頃交わした言葉があんな風になるなんてなァ゛オ゛ェ゛エ゛

 

この本は、ジャンルでいうならたぶんSF(サイエンスフィクション)と思うのですが舞台は我々が今生きる現代そのもの。ただし社会に対する皮肉、理不尽な現実がこれでもかと練り混ぜられており且つ非常に暴力的で、いわゆる猟奇的なシーンがかなり含まれているため、ホイッと他人にすすめられる本ではありません

 

しかし、この本を読んだおかげで、自分の中にあった漠然とした苦しみや寂しさの正体が少し見えたり、向き合おうという力をもらえたのです。奈月が遭ってしまった現実や、多数派の暴力が写るところではとても笑えず、自分の無力さにとことん痛感させられます。しかし、奈月がどのように生きたいかを見出そうとする姿に「じゃあ自分はどうしようか」と考えさせられるのです。その分めちゃくちゃオ゛ェ゛りますけどね。なんというか「落ち込んでる時にとことん暗いものに触れる療法」というのがあるかと思いますが、そういうのに近いかもしれません。そんな感じの刺激のある読書が欲しい!という方にいいかもしれませんがまず殺人出産を読み終えて白旗をあげなかった方にいいと思います。

 

 

 

なんでこんな描写ができるんでしょうね

本当すごいと思います

 

 

 

 

 

同じ著者のは現時点では3冊しか読んでないけど、いやーまさかコンビニ人間」が1番平和とは思わなかったなー

 

 

 

 

 

 

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他の本も読んでみよっと!