いつでも、これからが、満ちる時
恋愛、パートナーといる暮らし、結婚、家族
これら全てがイコールなのか
何が幸せなのか
あなたはどう思いますか?
久しぶりに感情が爆発したマンガに出会えました。
「三日月とネコ」
いうんですけれども。
人の数だけそのあり方は多様とはいえ、どうしても年の近い人と比べたりすることはありませんか。自分がターゲット層とされる雑誌やメディアで「これが"流行"です!」な表現を見るたびに、気分の晴れない思いをしたことはないですか。
そんな気持ちに対して月光のごとく静かに、そしてしっかりと照らして「こういう生き方、どうですか?」と優しく描かれた本書。
どんな話なの?と言われたら
「仕事も恋愛指向も色々と違う3人そしてネコが一緒に暮らしてる物語だよ」
と返すことになるわけだけども、
ルームシェアの知恵が詰まった本
ではないし
猫によって人生変えられたのか?とか
3人の中で恋愛関係が生まれるのか?とか
ポリアモリーの話なの?とか
そういう問いには全て「違う」って言えるんだよね。
何か特殊なアクションをしてるわけでもなく食べ物や暮らし、ご近所のこととか一緒にいるネコのこととかのほほんと書かれてるんです。言ってしまえば日常系ですね。
これだけ説明するとわけわからんかもなのでもう一度冒頭の言葉を使います。
"恋愛、パートナーといる暮らし、結婚、家族
これら全てがイコールなのか
何が幸せなのか
あなたはどう思いますか?"
そのように問う本ではないかと、私は思いました。
3つ、良いなぁと思ったこと書きますね。
ひとつ、
一緒に暮らす3人ともバラバラで共通点は出会うまで同じ地に暮らしていたこととネコが好きなことくらい。ぶっちゃけると冒頭にあげたどの肩書きにも当てはまらないような関係性なんです。そして読みすすめるとある人物のセリフにハッとして気づいたんです。私自身はこれらについては、いくつかイコールで結んでいると。今までは無意識だったレベルなものが。
自分がこのイコールなレールに対してコンプレックスやモヤモヤを抱いて今日まで至るわけですが。3人それぞれの温かい言葉に、「自分を否定していたけど、もうそんなことしなくていいや。自分にとってなにが幸せかて向き合って、楽しく日々を過ごせるのが1番なんじゃないか」と思えたんです。
もちろん、制度的に考えるとイコールにしておくと楽なところはあるかもしれないし、「全てはイコールではない!イコールな人はおかしい!」という主張でもないのがこの作品のいいところなんだよね。
次に推せるなぁと思ったのは、何かあったらすぐ会話するところです。困ったことや気になることがあった時、すぐに同居人に呼びかける。そしてその話に対してすぐ否定するわけでなく、じゃあどうしようこうしようとコミュニケーションする。
これサクッと書いちゃったけどすごいことですよね。どうしても「空気読メ、ワカッテクレ、ワカルダロ」と投げがちですが同性だろうが歳が近かろうが血が繋がってようが、それは幻に過ぎない。もし成り立ってるならそれは奇跡レベルか危うい状態であること、忘れちゃいけませんよね。3人が互いに相手を尊敬、敬愛してるからこそ、些細なことでも話し合う。良いですよねーめっちゃ理想ですわ。
最後にもう一つのおすすめポイント。3人暮らしはどっちかといえばマイノリティ。そんなマイノリティ要素を含んだ作品において(盛り上げ要素として)恒例な悲哀要素はほぼない。やっぱりあくまで日常のんびり系であることなんですよね。
読んでいて灯ちゃんの考えに、わかるそれ!となりながらも、特定のカテゴリに対して無性にキレたり恨むような構造がない形にしてるのが繊細ながらもしっかりしていて。結構好きです。
さて、この作品では冒頭にあげた4つが全てイコールではない3人が集まって暮らしているという奇跡で。でもその奇跡をギラギラさせすぎない描きと言葉で表しているのが、より心地よく読めるのではないか、とも思えます。
独り身であることが無性につらい、とか
自分はこのままでいいのかな、とか
マイノリティを描いた作品であるある、な家族との衝突や無理解からの暴力表現がしんどい、とか
自分はずっと"欠けている"んじゃないか
って。
そんな感じの人にオススメな作品かなーと。
にしても何故こんななかなかデリケートなテーマを日常として描けたのだろうかと思って調べたら、作者自身の経験に基づいているものがあるのだなと知ったんですよね。そこらへんは作者のSNSや載せてる絵などで一目瞭然。すぐ納得しました。
強いて「ん?」なことをあげるとしたら
本の帯に示された3人の主人公の肩書きは不要な気がするところかなぁ。
帯に書かれてるのはそれぞれの仕事、恋愛面、そしてセクシャリティ。
「へぇーそんな肩書きを持つ人がどうやって暮らしているんだろう?」という誘導のさせ方をするためならまあわからなくもないけど、いずれも本編を見ればある程度わかることだし、肩書きで人を見てしまう視線でもって読み進めてしまうのは、この温かくフワフワした世界観と合うのだろうかという疑問が浮かんじゃうんだよね。考えすぎだろ、といわれたらそれまでかもしれませんが。
現在のところ出されているのは1巻のみで、3人のこれからやこれまでなどまだまだきになるところがたくさんあるし、個人的には「3人が暮らす上でどのように話し合い協力し合うようになったのか」というところが大変気になるので、是非とも続きを出してほしいところです。
いやー、読み終えた瞬間に感情爆発して「ゔぁアー!」て衝動のまま思ったこと書いてみたもののなかなかまとまらなくて仕上げるのに割と時間がかかってしまった。作品自体あわくて美しいところがあるし、なんかそれを思うとどう口で説明できるんだろかと考えてしまったよね。そんなデリケートさは是非とも手に取って確かめてほしいと思います!